『うんこドリル』は下品なのか？『うんこドリル文章題』における「うんこ」の総数と出現率の考察

うんこで鍛える前頭葉。

古今東西・老若男女、人類が愛してやまないものがあります。

――そう、うんこです。

ひとたび登場すれば子供たちは腹がよじれるほど笑い、大人さえも虜にしてしまう魔法の単語。

私たちの人生はうんこに始まりうんこに終わると言っても過言ではありません。

しかし、大人になるといつしかその単語を口にしなくなり、笑いを取るために用いようものなら「ナンセンス」と白い目で見られてしまいます。

今回はそんなあまりに身近で鉄板で使い古されたネタに、真っ向から向き合ってみました。

『うんこドリル』なるものをご存知でしょうか？
文響社さんより出版された、問題文に「うんこ」が登場する小学生用ドリルです。

「日本一楽しい学習ドリル」と銘打って人気を博したこのドリルを、大人の目線からひも解いていくのが今回の企画。

下品極まりないように見えるこの一冊に、いったいどれほどのうんこと情熱が詰まっているのか……。検証していきましょう。

それではLet’s unko！
（もはや動詞としても使える便利な言葉。意味はわからんけど）

小学22年生、『うんこドリル小学3年生文章題』を解く

今回使ったドリルはコチラ。
『うんこドリル小学3年生文章題』（1,150円＋税）

B5サイズで、中は上質紙のフルカラー。
納得のお値段です。

うんこドリルシリーズは未就学～小学6年生が対象で、漢字・計算など豊富なラインナップが揃っています。

小3文章題を選んだ理由は、たまたま書店で手に取ったからに他なりません。

うんことの出会いも一期一会。袖振り合ううんこも多生の縁。

そんなわけで小学22年になる今年、約20年前を振り返りながらうんこの魔法が振りかけられたドリルを解いていきたいと思います。

まずは先生の紹介。

100kgのバーベルを担ぎながらランニングマシーンに乗る、という離れ業をこなすGTU（Great Teacher Unko）。

うんこは筋肉ということでよいのでしょうか？

早くも自分が何を言っているのかわからなくなってきました。

内容は1ページ目から狂気の沙汰

この狭いB5空間だけで、すでに13回「うんこ（unko）」という単語が登場する騒ぎです。

ちなみに、全体を通しての問題はこんな感じ。

盛りだくさん。

早い子だと、小3くらいから授業についていけなくなるかもしれません。

現に私もそろばんの授業でつまずき、

とBBA教員に匙を投げられた苦い思い出があります。

もしもあの時に「うんこドリル」があったなら――

……そろばんではまったく役立たなかったでしょうね。
それはさておきサクサク解いていきます。

寝ても覚めてもうんこ。

これは危険です。
子どもに変な性癖に目覚めかねない描写です。

それを危惧してかの注意書き。

問題は25章＋まとめテストで、全252問。

内11問は漢字テスト、7問は「スーパーうんこ問題」というお遊び問題なので、純粋な計算問題は234問になります。

うんこを数えてみた項目について

『うんこドリル』に登場するうんこの個数を数えてみました。

下記の項目において、「うんこ」という単語・「うんこ」のイラストの二種類をカウントしています。

『うんこドリル』に出現するうんこの数を単語とイラスト別に集計

では実際にどれほどのうんこが出現するのでしょうか。
単語とイラスト別に集計した表が以下のものになります。

	単語（回）	イラスト（個）
表紙	2	1
裏表紙	87	30
背表紙	1	1
表紙の裏（説明）	30	22
裏表紙の裏	3	3
数え方の表	2	8
目次	1	1
広告欄	31	48
シール		47

章	単語（回）	イラスト（個）
1	33	45
2	67	34
3	34	12
4	49	26
5	39	42
6	22	25
7	21	13
8	55	14
9	40	40
10	17	5
11	53	4
12	22	4
13	22	13
14	32	69
15	12	6
16	45	8
17	34	135
18	27	51
19	27	14
20	26	10
21	16	9
22	31	43
23	35	8
24	22	14
25	16	34
まとめテスト	24	12
平均	31.6	26.5
答え	9	30

平均で1つの章に31回「うんこ」という単語、そして26個のイラストが登場します。

グラフ化。

注目すべきその1は、うんこの使用回数が多い設問と少ない設問がおよそ交互に繰り返される点です。

緩急をつけることでうんこの飽和を避けているのかもしれません。

この現象はうんこウェーブ（仮）と名付けておきましょう。

さらに単語出現回数のみを見ると、グラフはわずかに右下がりになっています。これが発見その2。

大量放出を決めた前半と比較すると、後半では40回を超える出現はほぼなくなっています。

――そう、明らかに失速するうんこです。

これは、制作サイドのうんこに対するモチベーション低下が原因なのではないかと考察しました。

本当に全問題にうんこが使用されているのか？

表紙には、「全問題でうんこの使用に成功！」との文字。

それがまるで使命であり、誇るべき偉業のように強調されています。

しかし、本当に全問題に使われているのでしょうか？

文響社さんを疑うわけではありませんが、念のため全252問の設問を調べてみました。

するとどうでしょう。

「全問題の使用」について、やや懐疑的な結果になったのです。

問題文に登場するからセーフか？

設問に「うんこ」が登場していない問題がありました。

とはいえ直前の大問文章題に登場させているので、セーフなのかもしれません。

このような形式をとっている問題が他にも4問ありました。

「全問題で」と謳っているなら設問単位で登場させて欲しいところですが、ひとまずセーフにしましょう。

セーフ寄りのアウト

章の問題と関連しているものの、「かくにん問題」として独立した問題。

大問の問題文がなくとも解ける設問です。

この2問に関してはセーフといいかねますので、文響社さんのご意見をうかがうことにしました。

いつもうんこドリルに楽しませてもらっている者です。
先日「小学3年生　算数文章題」を購入いたしました。
表紙には『全問題でうんこの使用に成功！』と書いてありましたが、
19章のかくにん問題④と、23章のかくにん問題③にはうんこの単語が登場しておりませんでした。（添付画像）

これは全問題でうんこの使用に成功と言ってよいのか……と疑問に感じ、文響社様の考えをお聞かせ願いたいと思いご連絡いたしました。
返答をいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。

……お返事を待つ日々です。

なんと！　即迷惑メールに突っ込まれたかと思いましたが、返信をいただけました。

貴重な就業時間を、それこそクソとしか言えないメールへの返信にあててくださりありがとうございます。

このたびは弊社うんこドリルをご購入いただき，ありがとうございました。

文響社　うんこ編集部です。  

平素はうんこドリルシリーズをご利用いただき，ありがとうございます。

「うんこ算数ドリル　文章題　小学3年生」につきまして，ご回答いたします。

ご指摘の問題につきまして，問題文中で直接的に「うんこ」の扱いはございませんが，

章のお話に出てくる

「ブリブリゴブリン」（うんこモンスター）

「爆林豪吾郎」（うんこスタントマン）

という固有キャラが登場します。

こちらの扱いをもって，弊社においては「うんこの使用」といたしております。

ご理解をいただけますと幸いです。

楽しく学習できる教材をということモットーに，
開発・制作を引き続き進めてまいりますので，

今後ともご愛顧のほど，どうぞよろしくお願いいたします。

文響社さんには「うんこ編集部」という部署が存在するようです。

合コンで訊かれた際に全身が裂けても口にできませんね……。

さて。

「法曹界出身か？」と疑問を呈したくなる読点を打つ返信によると、2つのキャラクター＝うんこという扱いになるようです。

存在がうんこということでしょうか。

1問における「うんこ」の使用率・200％超！？

2問については使用が怪しいものの、全体を通してどの程度「うんこ」という単語が出現するのでしょうか？

1問あたりの使用率を求めてみました。
結果はこちら。

章	単語（回）	問題数（問）	1問あたりに登場する 単語数	使用率（％）
1	33	11	3.00	300%
2	67	10	6.70	670%
3	34	11	3.09	309%
4	49	12	4.08	408%
5	39	9	4.33	433%
6	22	10	2.20	220%
7	21	6	3.50	350%
8	55	11	5.00	500%
9	40	18	2.22	222%
10	17	7	2.43	243%
11	53	9	5.89	589%
12	22	9	2.44	244%
13	22	10	2.20	220%
14	32	10	3.20	320%
15	12	6	2.00	200%
16	45	10	4.50	450%
17	34	9	3.78	378%
18	27	10	2.70	270%
19	27	10	2.70	270%
20	26	11	2.36	236%
21	16	7	2.29	229%
22	31	11	2.82	282%
23	35	8	4.38	438%
24	22	5	4.40	440%
25	16	12	1.33	133%
まとめ	24	10	2.40	240%
平均	31.6	9.7	3.31	331%

設問数が各章で平均9.7問に対し、うんこという単語は約31回も登場。
問題数をうんこの数がゆうに3倍近く上回る結果は……まあ、予想内です。

使用率が高いほど『うんこ＞問題』となり、ページに占めるうんこ密度が高くなっていることを示しています。

これを問題文・設問文のみの登場に限定しました。
横に書いてある落書きなどは除外するというカウント方法です。

章	単語（回）	問題数（問）	問題文のみの出現回数	1問あたりに登場する 単語数	使用率（%）
1	33	11	29	2.6	264%
2	67	10	19	1.9	190%
3	34	11	28	2.5	255%
4	49	12	30	2.5	250%
5	39	9	34	3.8	378%
6	22	10	20	2.0	200%
7	21	6	15	2.5	250%
8	55	11	34	3.1	309%
9	40	18	30	1.7	167%
10	17	7	15	2.1	214%
11	53	9	23	2.6	256%
12	22	9	19	2.1	211%
13	22	10	20	2.0	200%
14	32	10	30	3.0	300%
15	12	6	8	1.3	133%
16	45	10	39	3.9	390%
17	34	9	28	3.1	311%
18	27	10	25	2.5	250%
19	27	10	17	1.7	170%
20	26	11	24	2.2	218%
21	16	7	13	1.9	186%
22	31	11	16	1.5	145%
23	35	8	26	3.3	325%
24	22	5	13	2.6	260%
25	16	12	14	1.2	117%
まとめ	24	10	23	2.3	230%
平均	31.6	9.7	22.8	2.4	238%

結果、もっとも使用率が高い16章で390％を記録しました。

1問につき約3.9個の「うんこ」が登場する計算です。
実際に見てみたところ……

うん、たしかに使われてるわ！

全体平均は238％。
さしずめ「うんこ200％」といったところでしょうか。

原作ファンに刺されないかと、不安で夜も7時間しか眠れそうにありません……。

うんこの出現回数とストーリーに相関関係があるのか調べてみた

続いてはちょっと違う視点から調べていきます。

『うんこドリル』に登場するうんこの数を単語とイラスト別に集計では、単語登場回数とイラスト個数を調べました。

この項目では、うんこの出現率変動に何か意図があるのか仮説を立てていきます。

『うんこドリル』は大問がそれぞれストーリー構成になっているのですが、

• 2章
• 7章
• 17章
• 19章
• 24章

の5つだけは、ストーリーが繋がって物語調になっています。

うんこボーイという人型ロボットが、

悪のうんこ軍団たちと戦う話です。

一度は勝利しますが再び窮地に立たされて……とありがちなストーリー。

簡単にまとめると各章の展開はこんな感じになります。

なおTo be continued…になる展開。

Unko will continue, forever.

これを序破急、あるいは起承転結に分類すると以下のようになります。

ストーリーの盛り上がりをグラフ化すると、こんな感じになるでしょう。

ストーリーラインは、『シンデレラ』に見られるものと同じ。
シンデレラ曲線と呼ばれる構成になります。

と思い、調べてみました。
つまり「ストーリーの起伏とうんこの数は比例するのか？」という検証です。

結果

青：単語数
赤：イラスト数
紫：1問あたりに占めるうんこの数

両者の間に相関関係は見られませんでした。

『うんこドリル』に登場したうんこの総数はXX個

レポートも終盤。
気になる『うんこドリル』に登場したうんこの総数です。

今回カウント対象となったのは、

1. うんこという単語
2. うんこのイラスト
3. うんこ先生
4. 問題番号
5. 式と答えと筆算

の5つです。

4と5ですが、問題番号、そして式と答えと筆算がうんこのシルエットになっているのです。

芸が細かい！
これらすべてを数えた結果、以下のようになりました。

問題以外	単語	イラスト
表紙	2	1
裏表紙	87	30
背表紙	1	1
表紙の裏（説明）	30	22
裏表紙の裏	3	3
数え方の表	2	8
目次	1	1
広告	31	48
シール		47
計	157	161

章	単語	イラスト	問題数 （シルエット）	式と答えと筆算（シルエット）	小計
1	33	45	11	20	109
2	67	34	10	24	135
3	34	12	11	20	77
4	49	26	12	24	111
5	39	42	9	18	108
6	22	25	10	20	77
7	21	13	6	12	52
8	55	14	11	10	90
9	40	40	18	5	103
10	17	5	7	12	41
11	53	4	9	21	87
12	22	4	9	22	57
13	22	13	10	24	69
14	32	69	10	24	135
15	12	6	6	15	39
16	45	8	10	23	86
17	34	135	9	22	200
18	27	51	10	24	112
19	27	14	10	23	74
20	26	10	11	24	71
21	16	9	7	12	44
22	31	43	11	20	105
23	35	8	8	22	73
24	22	14	5	10	51
25	16	34	12	23	85
まとめ問題	24	12	10	23	69
答え	9	30	234	426	699
計	830	720	486	923	2,959

合計 318＋2959＝3,277個！

『うんこドリル小学3年生文章題』では、合計3,277個のうんこが登場するということが明らかになりました。

意外！「うんこ」という単語を書かせる回答は1問しか存在しなかった！？

最後に。

下品な問題と3000個のうんこで、親御さんも難色を示しそうな『うんこドリル』。

しかし、回答に「うんこ」という単語を書かせる問題は1問しかなかったのです。

これは意外な結果ではないでしょうか。

たった1問です。

3,277個も「うんこ」が登場するにも関わらず、書かせるのは1度だけ。

逆説的に『うんこドリル』は下品ではない、と言えるのかもしれません。

『うんこドリル』で自由研究まとめ

子どもの計算ドリルと侮ることなかれ。
大人もこんなに楽しめてしまう『うんこドリル』

素晴らしいですね。

1週間で一生分のうんこと戯れたため、私がこれから関わるうんこは漏れなく来世のストック分になるでしょう。うんこだけに。

今では見るものですべてがうんこに見え、アスファルトに咲く花もうんこではないかと怯える日々です。

大人になってしまったあなたにも、大人になり損ねたあなたにもオススメできる『うんこドリル』。

道端で見つけた犬の糞で狂喜乱舞した童心を思い出してみませんか？

うんこで鍛えるメンタリティ。

以上

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