どうもこんにちは、あまぼしすずめ(@S_amaboshi)です。
趣味でもプロ志望でも小説を書いている方なら、
- 文章力を上げたい
- 語彙力を増やしたい
- おもしろい話を作りたい
- 素晴らしい小説を書き上げたい
- 云々かんぬん仏説摩訶般若波羅蜜多…
などと一度は切望したことがあるのではないでしょうか?
物語を書くスキル向上の最適解は、
ズバリたくさん書くことでしょう!
アイディアを日々たくさん出して、それをひたすら文章で形にしていく。
この繰り返しで、確実に物語を紡ぐ力はついていきます。
とはいえ、
そんなにポンポン思い浮かばないし、書き上げられないから困っているんだろう!!
という方の気持ちもわかります。
かくいう私も20年近く小説を書き続けているけれど、箸にも棒にもつまようじにも掛からぬ……というレベルで生きていく気力さえ沸きません。
しかし、死んだところで作家になれるわけでもないため文章力向上の修行を積むことにしました。
――その1つが小説写経です。
写経といえばお坊さんのイメージですが、写すのは経ではなく小説。
正確には写本というのでしょうか。
実際に刊行されている小説を書きとっていく、それだけです。
- 小説写経は小説を書く上で役立つ! やるべき!
- そんなものをやる必要はない、やったところで効果はない
と意見は分かれています。
ただ、後者の意見は圧倒的に素人が多く、プロ作家で「意味がない」と断言している方は私が知る限りではいません。
もちろんすべての作家が写本を薦めているわけではありませんが、そもそも「無意味」という言葉は生涯小説写経を続けたけれども、まったく文章力が向上しないまま没した人間が墓の中で言う――くらいしか許されない気がします。
なんにせよ凡才はあらゆる方法を試す以外道がないので、実際に小説を書き写してみました。
実行日数は、2019年の10月から2024年の3月現在まで、およそ4年半。
ほぼ毎日続けているので、今回はその成果をまとめます。
写本って効果あるの?
と疑問に思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
(……まあ、気になるなら自分で試してみるのが一番ですが)
それではLet’syahoooooooon!!!!!
Contents
4年間写本を続けるとどれくらいの量を写せるのか
速さ・量が目的ではないので、たくさん写せばよいわけではありません。
私は、1日30分~1時間(平均して45分くらい)のペースで続けています。
(2024年現在は1日15分ほど)
旅行へ行った日や夜通し撮影をした日は休んでいるので、実際に行なったのは、年330日くらいでしょうか。
手書きで書いた作品をもう一度PCで打ち込む、という流れです。
「小説写経は手書きとPCどちらがいいの?」
という点が気になる方は別記事でまとめたので、参考にしてみてください。
ぶっちゃけどっちでもいい。
上記の条件で行なったところ、4年半で長短合わせて10作を写本できました。
好きな作家と癖が少ない作家、の2パターンで選んだのが以下の作品。
- 人のセックスを笑うな
- 浮世でランチ
- カツラ美容室別室
- 長い終わりが始まる
- ニキの屈辱
- 雪国
- 伊豆の踊子
- 山の音
- 氷平線
- 蛇行する月
手書きの場合、1作品にかかった時間は1ヶ月半~半年。
1日1時間をコンスタントにこなすと1ヶ月半、30分~45分で行うと3ヶ月、1日10分ほどだと半年かかります。(作品により差あり)
PCの場合は2週間~1ヶ月。
途中から文字数を一文一文カウントしたり、コメントをいれたりする要素が増えたので、時間がかかるようになりました。
速くやることが目的でないので、構いません。
以下、しばらく余談が続くので、成果だけ知りたい方はコチラより飛んでください。
やや余談 小説写経のツール
手書きで写す時は、100均の5mm方眼ノート(50枚)を使いました。
セリアは種類が豊富!
よほどセリフや余白が多くなければ、6万字程度の小説はノート2~3冊に収まります。
「山の音」は4冊半でした……。
400字詰め原稿用紙も使いましたが、こちらだと230枚前後。
ノートの方が安上がりで保管も楽なため、ノートで問題ないでしょう。
大学ノートなら1冊で済むかもしれませんが、一文の文字数がカウントしづらいため採用していません。(最初だけは大学ノートにした)
PC入力はMicrosoftのWordで、40文字×35行の初期設定にて入力しています。
この設定でおよそ60枚程度の分量になりました。
現在は二段の表を挿入し、左側に本文、右にコメントのスタイルにしています。
好きなワードソフトを使用すればよいですが、色分けやコメント挿入ができる点でワードは便利です。
どちらも書籍はKindleで。
- ブックスタンドや手で押さえる必要がない
- マーカーでの色分けが可能・メモもできる
上記の点からおすすめです。
Kindle for PC (Windows) [ダウンロード]
やや余談 誰の作品を写せばいいか問題
- 好きな作家
- 文体に癖がない作家
- 故人
- 刊行冊数が多いベテラン
などが一般的によいといわれています。
いずれにせよ、「ひと作家につき3~5作は写そう!」とのこと。
1年過ぎた頃、「ナオコーラ先生は内容が好きだけど、文体はそこまでじゃないかもしれない……?」と思いはじめたので、彼女の作品は切り上げました。
本当は「美しい距離」が一番好きなんですけどね。
もっとクセが少なめの作家に移行しようと考え、2021年からは川端康成の小説を写しています。
こうすると自分が川端康成になったみたいでなんか楽しい。
デビュー作から追随するように写すのがよいといわれる中、初っ端から「山の音」に手をつけてしまう痛恨のミス。菊子がかわいいから一番好き。
さすがに全作は寿命が先に尽きそうなので、代表作3作を写本しました。
伊豆の踊子は短編だけど。好きだからしかたない。ロリコン。
ちなみに練習としては「一人称」または「三人称一元視点」の作品が向いているようです。
つまり神視点の作品はあまりおすすめではないとのこと。
誰の意見やねんって感じですが、小説家のわかつきひかるさんがYouTubeで申しておりました。ご参考までに。
(最初わかつきひかるさんを存じ上げなかったので、何故か「若桜木虔」さんがバ美肉してるチャンネルかと思ってた。んなわけあるか)
小説写経のやり方
正解はないので、自分なりに効果があると信じた方法を実行してみてください。
自分は以下のようにやりました。
①文字数をカウントする
方眼ノートを使っているため、一文の文字数が簡単にカウントできます。
Wordの方が容易ですが、こちらは枠外にメモするのが難しいため(できなくはないが視覚的にすっきりしない)、手書きの際に行なっています。
青文字が一文の文字数、赤が読点の間の文字数。
書き写す前に、文の文字数を予想しながら最近は書いています。
そうすると、だんだん文章の長短がリズムとして体に入ってきます。
②文章の役割を考える
写しながら、「この文は単なる説明か、人物の言動(アクション)か、それとも形容の説明か、風景描写か心情描写か……」などなど、文章が物語の中で果たす役割をメモしながら読み進めました。
色分けをするとわかりやすいものの、多色すぎるとたぶん混乱します。
③文章に対して納得や問いかけをしてみる
わけのわからん文章やセリフが唐突に出てきたら、その内容が作中で持つ意味を考えてみます。
読み進めていくうちにわかるときもあれば、最後まで意味不明なときもあり。
マジで気まぐれで書いたんじゃないの? みたいな。いや、そんなことないと思うけど。
④知らない語彙・気に入った表現はメモ
知らない語彙が出てきたらメモします。
良さげな単語はさっそく使ってみると、身に付きやすいのでおすすめ。
また、おもしろい表現や比喩などもメモして、
ほほ~ん、すごいな(なぜか上から目線)
と眺めています。
気に入った表現、比喩、五感の使い方、風景描写などが自分の中ではメモポイントになっています。
小説写経を続けた結果
4年半ほど小説写経を続けた効果を簡単にまとめました。
文字数の感覚が身につく
自分の文章を読み直すと、一文が長くなってしまっていることがあります。
たまにならよいのですが、読点間が30字の文章が5回も6回も続くと読みづらくてたまりません。
一文の長さを意識しながら小説写経を行ったところ、自分の文章でもリズムを意識できるようになりました。
おそらく一番の功績です。
文を削る意識が身につく
写してみて改めて実感したことですが、プロの文章は無意味な描写がありません。
写すうちに、自分の文でも「この一文は必要か?」という問いを投げかけられるようになりました。
まあ、それでも「必要!」と思って無駄な文を綴るんですけどね。
心情・描写・言動のバランスを考えながら文章を書ける
大体の小説が、心情・描写・言動がほどよく配置されています。
もちろん意図的に偏らせるシーンもありますが、全体を通すとやはり絶妙なバランスです。
自分の小説も、描写ばかりに偏っていないか、心情のみで進んでないか、言動だけになっていないか。
そんな点を意識できるようになりました。
(意識できても真似できるかは別)
書き写す作品の文体に近づく
わずかですが、写本しているうちに文体がその作品(というか作者)に近づいていきます。
真似したい文体が明確にある方は、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
ただ、その人の文体に近づくだけだと劣化版コピーになってしまうので、そこからどう差異を作るかが重要ですね。
その差異こそが自分の文体と呼ばれるものになっていくのだと思います。
文章を書くのが楽になった
「もー無理。もー書けない」。そんな風にのたうち回りますが、実際にそこで筆を折ることがなくなりました。
以前は長編小説が3000文字で終了(挫折)……なんてザラでしたが、今は無理くりにでも文章を捻り出せています。
それが良い作品になるかはさておき。
とはいえ文を書かないことには始まらないので、書き続ける力が付いてきたのは良い兆候としておきます。
結局どれほど文章力が向上したかは未知数
大変残念なお知らせではありますが、この4年半の練習が目に見えて効果があったかというと……ぶっちゃけわかりません。
だってゲームのステータスと違って「文章力」とか「構成力」みたいな数値が頭の上に出るわけじゃないもの!!
新人賞も一次でソッコー落とされるんだもの!!!!
本当やってらんねえよクソ!!!!ファ〇ク!!!!
……と、まあ劇的な効果は期待できませんが、少なくとも数年前の自分よりはまともな文章が書けるようになっているのではないでしょうか。
その程度の効果があった気がします。
また、小説(とくに新人賞)は発想力、構成力、個性的なキャラクターなどの要素が重要視されるので、単純な文章力(筆力)だけついても太刀打ちできないでしょう。
むしろ新人は文章が多少粗削りでも「光るものはある」みたいな理由で発掘される気がします。知らんけど。
とはいえ、続けてもマイナスにはならないため(時間はかかる)、気になるのであれば試してみるとよいでしょう。
もちろん作品を仕上げる、文章を書き続ける方が大事なので、+αの位置づけで問題ないですが。
小説写経の続け方
- 小説写経が続かない
- 一作品を写し切ることができなかった
という方のために、写本を継続させる簡単なアドバイス。
時間を決める おすすめは朝帯
1日のうちで「小説写経に充てる時間」を決めてしまいます。
空いた時間でやってみようと思うと、なかなか空時間は生まれません。
おすすめは朝。
私も朝・昼・夕方・夜とさまざまな時間に習慣化させようとしましたが、結局朝の時間に落ち着きました。
(一般人に昼は厳しいでしょうし、夜は誰でも疲れてしまうので)
もちろん、朝の時間にやっている行動を削ったり、早起きをしたりと生活を変える必要も出てきます。
それをしてまで小説写経をしたいのか、まずは考えてみてください。
いずれにせよ、時間を固定させるのがポイントです。
1回に短時間でも毎日
週1で2時間やるより、毎日10分や15分でも毎日やる方が身になります。
どうせ1時間以上やろうと思っても集中力が持たなくなるので、気楽に1日10分からでもはじめてみましょう。
短いと感じたら伸ばしていく方法がよき。
目標を推測する
そもそも1冊の本を写すのは、結構時間がかかります。
あらかじめ1ヶ月~3ヶ月の長期戦になる、と覚悟しましょう。
数日続けたところで自分の書くスピードがわかってくるので、
- 1日に書けるページ数を考える
- そこから1冊にかかる時間を逆算
します。
計算がしやすいので、文字数がほとんど揃う方眼ノートをおすすめしています。
サボる日も考慮して、多めの日数を見積もっておくと心に余裕が持てますね。
1,2日やらなくても諦めず、何食わぬ顔でまた始めましょう。
3日はサボらない、みたいなルールを決めておくのもよいです。
PCの方が圧倒的に楽なので、最初はPCからはじめてみてもいいかもしれません。
ちなみにですが、週に4回以上やる行動は習慣化しやすいといわれています。
小説は1度読んだものを選ぶ
全く読んだことのない作品を写そうと思う人は少ないと思いますが、念のため。
話が頭に入ってこなくて混乱するので、一度読んだものを選びましょう。
写本をしているうちに理解が深まるので、「好きだけどなんかよくわかんない」みたいな作品でもいいんじゃないのかな、というのが個人的な考えです。
まとめ「できることから始めよう」
進研ゼミ中学講座!!!!!!!!
作品を写すだけでよい物語が書けるようになれば苦労しませんが、何もしないよりは意味があると思っています。
(そう信じないとやっていられませんわ)
目に見える数値で良し悪しが判断できない文章の世界では、自分が前進しているのか不安になるときがあるはずです。
また、作品が仕上がらずにやる気が出ない方もいるかもしれません。
「人の文章を写す」行為でも、文章から離れずにいるために小説写経は一つの選択肢になるのではないでしょうか。
効果がありそうだと思ったら、ぜひ習慣にしてみてください。
いつか自分が作家になれたら この記事に説得力が増すのになあ
すずめ
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